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  新制度創設と現行制度の改善  

 
 政府・与党は社会保障の充実や安定化に向けた財源を確保するための社会保障・税一体改革の検討を進め、2月17日に大綱を閣議決定した。今後は関連法案を平成24年の通常国会へ提出する予定となっている。
 年金関係では、「所得比例年金」と「最低保障年金」の組み合わせからなる制度に、すべての人が加入する新しい年金制度を創設するとしている。
 新しい年金制度の創設までには一定期間を要することや、当面は新旧両制度からの年金支給となるため、新しい年金制度の方向性に沿って、現行制度の改善が図られる。主な改正項目は以下のとおり。
<新しい年金制度の創設>
 「所得比例年金」と「最低保障年金」の組み合せからなる一つの公的年金制度を創設する。
■所得比例年金(社会保険方式)
 職種を問わず、すべての人が同じ制度に加入し、所得に応じた保険料を負担し、同じ給付を行う。
■最低保障年金(税財源)
 満額7万円(現在価額)の最低保障年金を支給する。
<現行制度の改善>
■基礎年金国庫負担2分の1の恒久化
 年金財政の持続可能性の確保のため、税制抜本改革により確保される安定財源を基に、基礎年金の国庫負担割合2分の1を恒久化する。
■最低保障機能の強化
 年金制度の最低保障機能の強化を図り、高齢者などの生活の安定を図るため、低所得者の老齢・障害・遺族基礎年金への加算を行う。
 受給資格期間を現在の25年から10年に短縮し、無年金者に対して、納付した保険料に応じた年金が受給できるようにする。
■高所得者の年金給付の見直し
 高所得者の老齢基礎年金の一部(国庫負担相当額まで)を減額する制度を創設する。
■物価スライド特例分の解消
 マイナスの物価スライドを行わず年金額を据え置いたことにより、本来の年金額より2.5%高い水準の年金額を支給している措置について、平成24年度から平成26年度の3年間で解消する。
■産休期間中の保険料負担免除
 育児休業期間に加え産前・産後休業期間中も保険料を免除し、年金額に反映させる。
■短時間労働者の厚生年金適用拡大
 働き方に中立的な制度とし、将来の年金権を確立するため、短時間労働者の厚生年金の適用を拡大する。
■被用者年金一元化
 公務員と私学教職員の保険料率や給付内容を、民間サラリーマンと同一にする。
■第3号被保険者制度の見直し
 第3号被保険者制度に対する不公平感を解消するため、引き続き総合的検討を行う。
■マクロ経済スライドの検討
 デフレ経済下では、現行のマクロ経済スライドによる年金財政安定化は機能を発揮できないため、見直しを行う。
■在職老齢年金の見直し
 就労意欲を抑制していると指摘されている、60歳台前半の在職老齢年金制度について、調整を行う限度額を引き上げる。
■標準報酬上限の見直し
 高所得者について、負担能力に応じた負担を求めていくため、厚生年金の標準報酬の上限を引き上げる。
■遺族基礎年金の男女差解消
 遺族基礎年金は母子家庭には支給される一方で、父子家庭には支給されないという男女差を解消する。