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  協会けんぽの財政基盤強化  

 
 5月24日に「健康保険法等の一部を改正する法律案」が成立し、協会けんぽに対する財政特例措置が、さらに2年間延長されることとなった。
 この改正により、平成25年度と平成26年度は、現在の協会けんぽの平均保険料率である約10%を維持できる見通しとなった。
 ただ今回の改正は当面の対応策で、現在の財政構造のままでは、平成27年度には再び赤字に転落し、平成29年度には2兆円の累積赤字となる見通し。協会けんぽ等の被用者保険全体の持続可能性を維持するための制度改正の実現が必要となる。
 協会けんぽの加入事業所のほとんどは中小企業であり、協会けんぽの財政問題は中小企業の経営と従業員の生活に直接係わってくる。このため、社会保障制度改革国民会議において、今後の社会保障制度のあり方が議論されている。
 現在、協会けんぽの加入者は3,500万人で、 国民の3.6人に1人が加入している。健保組合を作ることができない中小企業などが多く、事業所の4分の3以上が従業員規模が9人以下となっている。
 協会けんぽは近年、医療費の支出が保険料収入の伸びを上回り、その格差が拡大傾向にある。協会けんぽ全体の収支は約8兆円で、その約4割の約3兆円以上が高齢者医療への拠出金に充てられている。平成24年度はさらに3,000億円、平成25年度もさらに2,100億円増加すると見込まれている。
 協会けんぽの単年度収支差と準備金残高の推移をみると、平成19年度から単年度赤字に陥り、18年度に5,000億円あった準備金は21年度末でマイナス3,200億円に悪化。この赤字は22年度から24年度の3年間で解消する必要があり、単年度収支をプラスにして財政運営をしている。赤字は結果的に2カ年で解消されたが、これは保険料率の大幅な引上げと、賃金の下落幅が見込みより小さかったことなどによるものである。
 協会けんぽの財政収支の将来見通しとしては、保険料率は10%が限界。制度改正が行われないまま、平均保険料率10%を据え置いた場合、平成29年度には2兆3,700億円もの累積赤字となる。
 平成15年度に総報酬制に移行してから、保険料の基礎となる報酬の水準格差が拡大し、協会けんぽと健保組合との間で体力差が顕著に示されている。
 被用者保険間の財政力を調整する目的で、協会けんぽに国庫補助が投入されているが、現行の国庫補助割合では、その調整機能を果たしていない。
 協会けんぽ・健保組合・共済組合の財政状況を比較してみると、加入者の収入が最も低い協会けんぽが、最も高い保険料率10%となっている(健保組合平均8.635%、共済組合平均8.20%)。収入が低い人ほど高率の負担を強いられるという逆進的なものとなっている状況にある。
 医療保険制度の持続可能性を維持するに当たり、協会けんぽの財政基盤を強化することが最優先で、そのために高齢者医療の負担のあり方を見直し、医療費の支出面に着目した制度改革が必要とされている。
 その具体策としては、国庫負担割合を現行の16.4%から法律本則の上限20%に引き上げるとともに、高齢者医療の公費負担を拡充し、現役世代の負担を、頭割りから支払能力に応じた負担に変更する(全面総報酬割)ことが検討されている。また、70歳から74歳の高齢者の窓口負担割合を1割から2割に引き上げ、高齢者にも応分の負担を課すなどの措置が必要とされている。