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  厚生年金基金制度の見直し  

 
 4月12日に今国会に提出されていた「公的年金制度の健全性及び信頼性の確保のための厚生年金保険法等の一部を改正する法律」が6月19日に可決・成立した。 
 第3号被保険者に関する記録の不整備期間の保険料納付を可能とすることや、厚生年金基金について、他の企業年金制度等への移行を促進しつつ解散の特例を導入するなどが主な改正内容。
 基金制度の見直しについては、AIJ問題発覚以降、代行制度をはじめとする制度のあり方を検討するため、社会保障審議会年金部会に専門委員会が設置され、議論が進められてきた。
 この問題に関しては、代行制度自体の持続可能性という観点から、基金制度を10年間で廃止するのが妥当という意見が出されていたが、その後、自民党から健全な基金まで一律に廃止するのはどうかとの反対意見が出されていた。
 見直しの具体的な内容は、厚生年金の支給に必要な1.5倍以上の資産を持つ約1割の健全基金については、一定条件のもとにおいて存続を認めた。
 代行割れを起こしている約4割の基金には来年4月の施行日から5年以内を「代行割れ問題」に集中する期間とし、特例解散制度による解散(自主解散を基本に、清算型解散も導入)を実施する。
 特例解散適用基金の受給者は、申請時点以降、上乗せ給付が支給停止される。また申請以降、年金記録の整理に先行して、代行資産を返還できる仕組みが導入される。
 代行割れ予備軍とされる約5割の基金については、確定給付企業年金や確定拠出年金、中退共等への移行を促す。
 施行日から5年後以降は「代行割れを未然に防ぐ制度的措置」を導入する期間として一定の基金存続条件を定め、基準額に満たない基金に対しては、厚生労働大臣が予め社会保障審議会の意見を聴いて解散命令を発動できる。
 その他、今回の基金制度見直しのポイントとしては、施行日以後は厚生年金基金の新設は認められない。
 上乗せ給付の受給権保全を支援するため、基金から他の企業年金等への積立金の移行を可能とする特例が設けられた。
 深刻な状況に陥っている代行割れ基金については、分割納付の特例として、@事業所間の連帯債務外し(解散時に各事業所の債務を確定し、各事業所が直接国に納付)、A利息の固定金利化(利率は解散した年度の国債の利回りを勘案して厚生労働大臣が決定)、B最長納付期間の延長(15年→30年)が行われる方向が示された。
 基金から他制度への移行支援としては、代行割れ予備軍および健全基金については基金解散後、事業所(企業)単位で既存の確定給付企業年金や中退共へ移行できる仕組みが創設される。
 また、基金を脱退した事業所の従業員が、確定拠出年金へ資産移換できるよう規制が緩和される。
 企業年金の選択肢の多様化としては、キャッシュバランスプランの給付設計に用いる指標が拡大される。簡易な制度設計や手続きで設立できるよう、確定給付企業年金の対象が拡大される。
 実際に解散となると財務余力が乏しい中小零細企業においては、負担が発生することは不可避である。基金に加入している企業においては、今後しっかりとした情報収集を行っておきたい。