「電子申請(e-Gov)」はe-Gov電子申請システムより所定の手続きで作成された届書(連記式、CSV方式)を、厚生労働省受付汎用システムを経由して、日本年金機構事務センターへオンラインにて申請する仕組みです。
また、「電子媒体申請」は機構が定める媒体届書作成プログラムを利用して作成された届書をFD、CD、DVDなどの電子(または磁気)媒体へ収録の上、年金事務所または事務センターへ持参するか郵送することにより申請する仕組みです。
これらの活用は、事業主(提出を代行する社労士)と日本年金機構双方にとって、次のようなさまざまなメリットがあるため、利用促進に向けた取組みが進められています。
<事業主>
社内の人事・給与などのシステムとの連動や、労務管理の実態を反映した事務手続きが可能になり、利便性の向上と事務の省力化を図ることができます。
作成した届書を機械的にチェックすることが可能になり、提出時の記入漏れを防止することができます。また、一括適用対象の本店と支店間や、支店と支店間の人事異動に伴う資格喪失や資格取得の手続きが不要となり、届出誤りや届出漏れを防ぐことができます。
<日本年金機構>
入力業務の効率化・経費の節減を図ることができます。また、入力に起因する年金記録誤りを防止することができ、事業主における届出漏れなどの減少と年金記録の正確性を確保することができます。
■事業主の申請方式と適用形態の選択肢提供
各事業所において、社会保険事務の電子化に対するニーズは、事業所の規模(被保険者の人数)や事業所での給与・社会保険分野へのシステムの導入状況により、さまざまです。
また、賞与支払届や算定基礎届など、定型的大量処理が中心で電子化のなじみやすいものがある一方で、資格喪失届など対象者も少なく、また添付書類などの別送が必要なことから、電子化のメリットが感じにくい分野もあります。
届書の電子化を進めるに当たっては、現実の事業主の実務面での使い勝手を考慮した上で、事業主の実態に即した申請方式※1と適用形態※2を選択できる環境を整備することが基本的な方向になります。
※1 「電子申請」、「電子媒体申請」、「紙による申請」の3つの申請方式
※2 「事業所単位での適用」、「本社管理による適用」、「一定の要件により承認された一括適用」の3つの適用形態
■関係者のニーズの把握と機構事務の合理化
「電子申請」・「電子媒体申請」の推進に当たっては、全国社会保険労務士会連合会と連携しながら、事業所を始め利用者のニーズに的確に対応できるものとすることが重要になります。
同時に、事業所から機構を含むプロセス全体として入力誤りや記載漏れの防止と事務処理の合理化を図ることに努めなければなりません。とりわけ、機構の事務処理において電子化のメリットを十分に活用できるシステムとなる改善が必要になります。
■今後の具体的な取組
FDの生産終了を踏まえ、提出媒体が平成23年12月からCD(R/RW)、DVD(R/RW)へ拡大されます(当分の間はFD・MOによる提出も可能)。
★現在一括適用磁気媒体の仕様によりFDで作成している媒体についても、CDまたはDVDによる提出が可能になります。
また、提出可能な媒体の拡大を契機に、事業主や年金委員に対して、「電子申請」・「電子媒体申請」の仕組みやメリットのほか、「電子媒体申請」のターンアラウンドCD(あらかじめ被保険者情報が収録)の活用による効率的な届書作成についての周知および利用勧奨が行われます。
具体的には、納入告知書の発送に合わせ、9月には「CD・DVDで届書の提出が可能になります」の案内が、10月には「ターンアラウンドFDがCDに変更になります」の案内がすでに送付されています。また11月には「厚生年金保険の届出―もれ・誤りを減らす仕組みのご案内」が送付されます。
平成23年度内には、被保険者数100名程度以上の事業所を中心に、電子媒体申請の仕組みやメリット、ターンアラウンドCDの利便性に関する情報提供を行い、電子媒体申請の利用勧奨が実施されます。さらに平成24年4月から6月には、平成24年度の算定事務に向けた取組みが行われます。
■電子媒体申請に関連する対象届書の拡大
「健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届」と同一契機で提出される「健康保険被扶養者(異動)届」(年間290万件)および「国民年金第3号被保険者関係届」(年間505万件)について今年度中に開発に着手し、電子媒体申請の対象届書に追加されます。
事業所の担当者の立場に立って分かりやすい、使いやすいものとするために「紙による申請」・「電子申請」・「電子媒体申請」の比較表を掲載するなどの見直しが順次行われます(平成23年9月〜)。
今後、「電子申請」・「電子媒体申請」がさらに使いやすいものとなるように、これまでの調査・検討に加え、事業所からの意見徴収や関係者との意見交換、年金事務所からの改善要望事項の聴取など通じて課題を抽出し、システムの改善が図られる(平成24年度に開発・実施)。
日本年金機構における入力業務の効率化や、入力に伴う記録誤りの可能性は軽減されているものの、さらに電子的な申請であることのメリット生かすために、審査業務の効率化につなげていくことが重要としています。
このためシステム改善においては、CSV化対象届出の追加を始め、利用者の利便性の向上に加え、機構における各届書の処理プロセス全体を見通して、事務の効率化などの課題の改善に取り組まれます。
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